Uncontrolled(アンコントロールド)
DVDプレイヤーには、借りてきたDVDが既にセットされている。ミステリー小説を映画化したという半年前に上映されたハリウッド映画だ。小説自体は20年以上前に世界中でベストセラーになったものだが、星名はまだ読んだことがなかった為、小説と比べることなくストーリーを追っていけばいいので集中しやすい。

原作が既読小説の場合は、どうしても比較してしまうきらいがあるので楽しめない。映像になった段階でそれはもはや別物だと理解していても割り切れないこともある。殊に思い入れのある作品は尚更だ。

朝倉にそう話したら、星名の考えも理解できると同調したうえで、別の角度から切り込むことで、作品により深みを持たせることも可能だろうし、小説に新たなファンがつくかもしれないから、要所要所にエッセンスを残してあれば良いのではと言う。そして、色んな解釈があって良いと思うし、けれども、その辺りで小説が原作の場合、賛否両論が起きるんだろうねと続けた。

確かに、星名が敢えて既読小説の映画化を観ない理由は、以前、とある映画を観て裏切られた感があったからだ。自分が大切にしていた世界観はどこにも存在しなくなっていた。演じた俳優の雰囲気や空気感といったものが原作にマッチしない事から始まり、ページを捲る度に感じた情景から匂い、色合いといったものまでもが違和感を覚えてしまった。その映画は賛否両論が真っ二つに割れて、賞レースを正に混乱の渦に陥れたという曰くつきとなった。

借りてきた映画は、実は朝倉は原作を読んでいたが、それでも柔軟な捉え方から、どこがどんな風に変わっているのか、もしくは原作に忠実なのか、楽しみだと言う。


二時間後。
テレビ画面には映画のエンドロールが流れているのではなく、お笑い芸人が司会を務めるバラエティ番組が映し出されていた。

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