Uncontrolled(アンコントロールド)
電車の終電時刻を気には留めていたものの、もっとこの時間を共有したいと伸ばし伸ばしになっているうちに、あっという間に10分前を切っていた。
「先輩、私そろそろ帰りますね。先輩といると楽しくてつい時間を忘れちゃうけど、次の電車が最終なので」
「もうそんな時間なんだ。いいよ、今日泊っていけば。明日の朝送っていってあげるし」
まるで朝倉にとっては、異性を家に泊めることなど造作もない事のような、軽やかで滑らかな口振り。
当たり前のように親切心を見せてくる彼に、星名は逡巡する。
かつての部署で泊りの出張があった際、ホテル側の手違いで男性の同僚と同室で一晩過ごすはめになったことがあったが、一応覚悟したとはいえ、取り越し苦労だったという事を経験している。
友人の中には、星名と同様の経験をしている者も少なからずいて、中にはその日限りという条件で一線を越えたという強者もいたが、朝倉に関しては、単なる親心のようなものだったり保護の対象として見られているところもある為、あまり警戒心を打ち出してしまうのは、その気持ちを仇で反してしまうのではと少なからず危惧してしまう。
何より、朝倉がもし本気を出せば、今までにいくらでも星名をお持ち帰りすることはできたはずだという思いがある。
つまりは、異性として彼の範疇には入っていないということになる。
そこまで考えて、少しだけ胸が痛んでしまうのは思いあがりというものだ。
「それじゃあ、お言葉に甘えてもいいですか。お礼に明日の朝食は私に作らせてくださいね」
「ホント? 星名ちゃんの手料理嬉しいな」
手の込んだものは作れませんけど、と続けたものの、朝倉はにこにこと嬉しそうな顔をしている。
普段駆け引きめいた事を言ってくる割に、たまにこうした裏表のない素直で屈託ない表情を見せられると、母性本能が擽られるのかきゅんと胸がときめいてしまう。
笑うと少し垂れ目気味になる目尻が可愛く思えてしまうのは、気のせいにしておいた方がいいだろう。
「先輩、私そろそろ帰りますね。先輩といると楽しくてつい時間を忘れちゃうけど、次の電車が最終なので」
「もうそんな時間なんだ。いいよ、今日泊っていけば。明日の朝送っていってあげるし」
まるで朝倉にとっては、異性を家に泊めることなど造作もない事のような、軽やかで滑らかな口振り。
当たり前のように親切心を見せてくる彼に、星名は逡巡する。
かつての部署で泊りの出張があった際、ホテル側の手違いで男性の同僚と同室で一晩過ごすはめになったことがあったが、一応覚悟したとはいえ、取り越し苦労だったという事を経験している。
友人の中には、星名と同様の経験をしている者も少なからずいて、中にはその日限りという条件で一線を越えたという強者もいたが、朝倉に関しては、単なる親心のようなものだったり保護の対象として見られているところもある為、あまり警戒心を打ち出してしまうのは、その気持ちを仇で反してしまうのではと少なからず危惧してしまう。
何より、朝倉がもし本気を出せば、今までにいくらでも星名をお持ち帰りすることはできたはずだという思いがある。
つまりは、異性として彼の範疇には入っていないということになる。
そこまで考えて、少しだけ胸が痛んでしまうのは思いあがりというものだ。
「それじゃあ、お言葉に甘えてもいいですか。お礼に明日の朝食は私に作らせてくださいね」
「ホント? 星名ちゃんの手料理嬉しいな」
手の込んだものは作れませんけど、と続けたものの、朝倉はにこにこと嬉しそうな顔をしている。
普段駆け引きめいた事を言ってくる割に、たまにこうした裏表のない素直で屈託ない表情を見せられると、母性本能が擽られるのかきゅんと胸がときめいてしまう。
笑うと少し垂れ目気味になる目尻が可愛く思えてしまうのは、気のせいにしておいた方がいいだろう。