Uncontrolled(アンコントロールド)
一彰に連絡を入れようかとも思ったが、いくら相手が朝倉とはいえ、異性の家に泊ることを正直に伝えるべきかといえば必ずしもそうではないだろうと、控えることにする。仕事でトラブルがあったと夕方に連絡がきてからその後も音沙汰がないことを考えれば、まだ処理に当たっているのかもしれないし、もしくは仕事を片付けた後同僚と飲みにでも出掛けたのかもしれない。

朝倉から、ちゃんと洗濯してあるからと渡された、メンズサイズのスウェットの上下とボクサーパンツに、シティホテルで用意されているような厚手でふんわりとした柔らかい手触りのバスタオルを抱え、洗面室に向う。

帰宅した時にも案内されて、メンズものの化粧水やアフターシェービングケア用品、ワックス等がきちんと並べられた洗面台を見て、余裕を見て支度をするタイプなのだと思った。

星名も朝はゆとりを持って行動するように心掛けているが、夜更かし等でなかなかそうもいかない時もある。そんな朝は、タオルやらドライヤーやら置き場に構っている余裕はなく、全てを放り出したまま家を飛び出すはめになる。

ちらりと棚を見れば、目立った埃もなく定期的に掃除をしているようだ。
バッグに常備してあるお泊り用セットからメイク落としを取り出し、くるくると手のひらで顔に馴染ませながら、まるで小姑のように目を走らせている事に気付いてはっとする。

純粋に好きという気持ちだけで恋愛したいだなんて、我ながらよく言えたものだと呆れてしまう。

整頓された部屋を見れば、単にきれい好きなのか、それとも本当は甲斐甲斐しく身の回りの世話をしにやってくる女性がいるのでは？などと、付き合っている訳でも疑る立場にもないのにあれこれ思いを馳せている。

単なる興味本位なのか、それとも朝倉だからなのか分からなくなってくる。
もしかしたら、自分で思っている以上に面倒くさい女なのかもしれない。
バスルームに置いてあるシャンプーやボディソープがメンズ用で揃えられていたのを見て安心してしまうなんて。

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