Uncontrolled(アンコントロールド)
「航平先輩とは学部も違ったしキャンパスも広かったから、私が入学したこと自体気付かれてないと思ってました。留学は、翻訳家の事もあったけど、実際うちの大学は帰国子女も多くて最初からレベルの差には気付かされていたから少しでもそれを埋めたいというのもあって……。やっぱり、どの道もピンキリというか、私以上にすごい人間はいっぱいいて、それでも自分でなきゃだめだ!っていう情熱を持ち続けることができれば良かったんですけど。帰国してからはすぐに就活が始まって、その頃には現実的に将来を考えるようになっていました」
今振り返れば、その頃に青春時代が終わったのかもしれない。
根拠もなく、自分の意思は自由でその行動は無限だと信じていた少女から、分別を重んじる大人の女性へと変化を遂げていた。
ある意味、挫折を知ったと言っても良いのかもしれない。
今では職に恵まれ、やりがいを持って日々社会人生活を送れていると感じている自分がそんなことを思うこと自体がおかしなことなのかもしれないが。
「まぁね。好きな仕事で飯食ってる人間はほんの一握りだと思うし、自分が好きなこととできることは、また違ってくるだろうから。でも、夢を諦めたり捨てたりしたことを後悔する必要はないと思うんだよね。その代わりに手に入れたものっていうのは、必ずあるはずなんだから」
「……っ」
途端に胸の奥底から込み上げてくるものがあり、目頭がつんと熱くなる。
朝倉は何も気にも留めずに言ったのだろう。彼のどの言葉が琴線に触れたのか。
夢に対してまだどこか、昇華しきれていない想いがあったのかもしれない。
どういう訳か、朝倉はまるで星名を見透かしたように欲しい言葉を掛けてくれる。
星名が眉間に皺を寄せ必死に堪えているその隣りでは、朝倉が気付いているのかいないのか、これまで話していたテーマに戻り、観ると元気になる映画のタイトルを口にしながら、タブレットを操作して星名に見せてくる。
その頃には平静を取り戻していて、朝倉の手元を覗き込めば、この子役が泣かせてくるとか、主人公がろくでもないやつなんだけどと、評論家同士の討論めいた談議が再燃する。
今振り返れば、その頃に青春時代が終わったのかもしれない。
根拠もなく、自分の意思は自由でその行動は無限だと信じていた少女から、分別を重んじる大人の女性へと変化を遂げていた。
ある意味、挫折を知ったと言っても良いのかもしれない。
今では職に恵まれ、やりがいを持って日々社会人生活を送れていると感じている自分がそんなことを思うこと自体がおかしなことなのかもしれないが。
「まぁね。好きな仕事で飯食ってる人間はほんの一握りだと思うし、自分が好きなこととできることは、また違ってくるだろうから。でも、夢を諦めたり捨てたりしたことを後悔する必要はないと思うんだよね。その代わりに手に入れたものっていうのは、必ずあるはずなんだから」
「……っ」
途端に胸の奥底から込み上げてくるものがあり、目頭がつんと熱くなる。
朝倉は何も気にも留めずに言ったのだろう。彼のどの言葉が琴線に触れたのか。
夢に対してまだどこか、昇華しきれていない想いがあったのかもしれない。
どういう訳か、朝倉はまるで星名を見透かしたように欲しい言葉を掛けてくれる。
星名が眉間に皺を寄せ必死に堪えているその隣りでは、朝倉が気付いているのかいないのか、これまで話していたテーマに戻り、観ると元気になる映画のタイトルを口にしながら、タブレットを操作して星名に見せてくる。
その頃には平静を取り戻していて、朝倉の手元を覗き込めば、この子役が泣かせてくるとか、主人公がろくでもないやつなんだけどと、評論家同士の討論めいた談議が再燃する。