Uncontrolled(アンコントロールド)
星名の週末の朝は、平日より2時間遅れで始まる。
休日はアラームのセットはしない為目覚めは自然に任せているとはいえ、二度寝をしても9時前にはベットを出ている。

さすがに今朝は他所様のお宅に泊った意識が常にどこかであったため、出勤日とほぼ同時刻に目覚めた。それから小一時間ほど経過しているが、朝倉が起きてくる気配がない為、布団の中で静かに身を潜めている。恋人でもない異性の家で寝泊まりしたとはいえ変な緊張感もなく、普段は枕が変わると寝付くまで時間が掛かるほうだが、自分の部屋にいるときと同じようにリラックスして眠ることができた。

それから30分ほどごろごろしてから布団をリビングの隅に片付けると、なるべく物音を立てないように細心の注意を払いながら洗面室に向い、洗顔と歯磨きだけを済ませて再びリビングに戻ってくる。

朝食は星名が作ると約束していた。
冷蔵庫のものは勝手に使ってもらって構わないと朝倉から了解を得ている為、ディッシュラックからグラスを一つ拝借して注いだミネラルウォーターで喉の渇きを癒す。スェットの袖を腕まくりすると手を洗い、先ずはサラダ作りから開始することにする。

朝倉からは、食事は殆ど外食だと聞いていた為、飲み物くらいしかないだろうと思っていた冷蔵庫には、レタスやトマト等の野菜や卵にベーコンといった朝食用に最低限必要なものは揃っていて、朝の食事はきちんと家で取る派なのだと推測する。

レタスを千切りながら、卵料理は何が良いか聞いておけば良かったと後悔する。目玉焼きがオーソドックスだと思うが、スクルンブルエッグやゆで卵という可能性もある。冷蔵庫には使い掛けのバターがあった為、毎日とは言わなくてもスクランブルエッグもローテーションの中に入っているのかもしれない。
星名が心の中で唸っていると、リビングの隣りにある寝室のドアが開き、まだ半分寝ぼけ眼の朝倉が顔を出す。


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