Uncontrolled(アンコントロールド)
『本当の恋を知らない』
昨晩、朝倉に言われた言葉がふと脳裏を過る。
恋人がいる身でも、他の誰かを好きになることもある。もしそうなった時はどうするかと尋ねられて、人間には理性があると答えた。今の今まで、自分は恋人に操を捧げられる人間だと思っていた。でもそれは、朝倉が言うように、本当の恋を知らなかっただけかもしれない。
先輩後輩の仲である朝倉と一彰を仲違いさせるようなことはしたくはない。
けれども、この痺れるような灼熱から逃れられる術は今の自分にはない。
この欲望を認めてしまえば、堕ちていくのはあまりにも簡単なことだろう。
抗いたくないのに抗わなければと必死に思うのは、道徳心からなのか、一彰を大切に考えているからなのか。熱に侵されて、それさえも分からない。
朝倉のひんやりした手のひらが頬に添えられて顔を上げれば、彼のきらめく瞳に、今にも泣き出しそうな自分が映っている。
「全部、俺のせいにして」
熱い吐息とともに耳殻を甘噛みしながら吹き込まれたその言葉はまるで悪魔のささやきのようで、あっという間に全身を駆け巡る毒のように思考を奪っていく。
鼻先が触れ合うほどの距離まで落とされた朝倉の顔。
震える指先で、腰に回された彼の腕に縋ったのを合図に、唇は重なった。
昨晩、朝倉に言われた言葉がふと脳裏を過る。
恋人がいる身でも、他の誰かを好きになることもある。もしそうなった時はどうするかと尋ねられて、人間には理性があると答えた。今の今まで、自分は恋人に操を捧げられる人間だと思っていた。でもそれは、朝倉が言うように、本当の恋を知らなかっただけかもしれない。
先輩後輩の仲である朝倉と一彰を仲違いさせるようなことはしたくはない。
けれども、この痺れるような灼熱から逃れられる術は今の自分にはない。
この欲望を認めてしまえば、堕ちていくのはあまりにも簡単なことだろう。
抗いたくないのに抗わなければと必死に思うのは、道徳心からなのか、一彰を大切に考えているからなのか。熱に侵されて、それさえも分からない。
朝倉のひんやりした手のひらが頬に添えられて顔を上げれば、彼のきらめく瞳に、今にも泣き出しそうな自分が映っている。
「全部、俺のせいにして」
熱い吐息とともに耳殻を甘噛みしながら吹き込まれたその言葉はまるで悪魔のささやきのようで、あっという間に全身を駆け巡る毒のように思考を奪っていく。
鼻先が触れ合うほどの距離まで落とされた朝倉の顔。
震える指先で、腰に回された彼の腕に縋ったのを合図に、唇は重なった。