Uncontrolled(アンコントロールド)
身に付ける洋服だけではなく、パンプスからバッグまで、コーディネートに抜かりはない。
突然スタイルを変えるのは媚びている様で嫌だったし、かといって、今まで通りというのも素っ気なくアピール不足のような気がして、今日は普段多いパンツスタイルから、前スリットが入った膝丈のタイトスカートへとチェンジした。
パンプスはいつもよりも高めの8㎝ヒールにすれば、より脚がきれいに細長く見える。トップスは、ビッグシルエットの白いシャツをラフな感じで襟を後ろに抜いて、清潔感にほんのり色気をプラス。アクセサリーは普段からピアスをするくらいなので、控えめながらもダイヤがきらりと輝くゴールドのタイプにした。
メイクは、肌馴染みのよいレッド系のチークから女子らしいピンク系に変えれば、いつもより可憐な印象になる。あの夜の自分が全てではないと、ここで新たな一面をアピールしつつ、マニキュアは敢えて色を使わずヌードカラーに留めておく。
足し算よりは引き算で、かといって、手を抜いている訳ではない。
女友達と会う時は、おしゃれ番長を競うかの如く流行を全面的に取り入れるカジュアルな装いが多いが、異性とデートの場合は、ある程度どこに連れていかれても困ることのない服装を心掛けている。
女性が丁寧にメイクを施して綺麗に着飾っていれば、男性は自ずと相手を丁寧に扱うものだというのは、20代半ばともなれば経験として知っている。

朝倉からは、名画座に行こうと誘われていた。その前に少し腹ごしらえをしていこうと、近くのカフェバーで待ち合わせすることになっている。今日は星名が先に着いたため、店員に後で連れがくる事を伝えてから案内された席に着く。いつもは朝倉が店の予約をしてくれているが、今日は金曜日とはいえ時間が早いことやあくまで軽食の予定なので予約はせず、もし満席の場合はそのまま映画を観に行く話になっていた。

自分でも事前に名画座のホームページを確認したところ、モノクロ時代の懐かしいフィルムや昨年上映されたタイトルが並んでいた。これからの時間は、一昨年に封切られたフランス映画と昨年話題となったハリウッド映画の二本立てとなっている。どちらもそれぞれ舞台は違うが、心に傷を負った少年の成長過程を描いた作品だった。朝倉からは、二本観てもいいし、空腹に耐えられなければ一本だけにして食事にしようか、とラフな提案をされている。

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