Uncontrolled(アンコントロールド)
「星名ちゃん、今日少し雰囲気違うよね。メイクかな? いつもの凛とした感じも仕事がデキる女性って感じで好きだけど、今日みたいに可愛いらしいのもよく似合うね」

食事を終えて向った映画館で、朝倉がチケットを渡しながら、ふと星名の顔に目を留める。
待ち合わせをしたカフェバーはラウンジのように照明を落とした店内だった事もあり、チークの色が違うくらいでは気付かなくても当然だったし、星名としては、何かいつもと違う、と朝倉に思ってもらえるくらいで良かった。
それなのに、些細な変化に気付き、それをきちんと口に出して言ってくれる朝倉の言動を好ましく思う。
例えお世辞でも、自分が認めたいい男に褒められるのは嬉しいことだ。
それでも、恐らく彼のことだから普段からレディファーストで、誰彼にも同じような事を言っているのだろうと思うと、途端に価値を感じられなくなってしまう。
私だけを見て、私だけに優しくしてほしい。そう願ってしまうのは、紛れもなく独占欲の現れだ。

一度寝たくらいで、バカみたい。
星名のなかにいるもう一人の自分が、冷静な声でそう囁いてくる。
弾みで身体の関係を持った一夜限りのつもりの男が、セックスの相性が良かったからといって勘違いして俺のオンナ扱いしてくる煩わしさと同様、低次元でくだらない。
それであれば、何回寝れば、その勘違いは許されるのだろうと考えても、答えはすぐには出ない。

確かな言葉があれば信じられるのか。
それとも、身体の結びつきがあれば、それだけで信じていいのか。
どちらか一方だけでは相手の気持ちを計れないことは、恋愛を積んできた大人の女性として分かっていることだ。

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