夏の恋は弾ける炭酸
髪型をセットし終わり、メイクもしてくれたお母さんの心の中はうきうき。

今日の髪型はおだんごヘアー。

まだ待ち合わせの時間には早いから、部屋で少し休むことに・・・

髪型が崩れるから、ベットでゴロゴロなんて到底出来ない。


裕樹くん、甚平か浴衣着てくるのかなぁ~。
案外私服だったりして…。




待ち合わせの一時間前になり、私は慌てて階段をかけ降りた。

お母さんに"どんどんうるさい!"って、叱られちゃったけど・・・


裕樹くんとやっと二人きりになれるんだね。


「夏菜…着付けするからおいで」


お母さんが和室で、着物と帯と下駄をタンスから出していた。

お母さんが新調した浴衣は、可愛らしいピンク色の花柄が刺繍されている、少し大人っぽい。


「この浴衣可愛い!」


私は浴衣を手に取るなり、ボソッと独り言のように呟く。



「夏菜が喜んでくれて良かった♪夏菜ももう大人なんだね…」


「お母さん?」


「お母さんはね、夏菜が幸せでいることが嬉しいの。
一年一年、夏菜はお母さんの歳を追っていく
だから、若い内には沢山青春することも、大事だよ?」


「お母さん、私、若い内に沢山青春する!!
沢山恋をして、私輝くね!」


「夏菜…頑張れ!!」


お母さんは浴衣を私の体に羽織わせ、着付けをしてくれた。
お母さんの着付けは上手い。
背中に付けるリボンがこれまた華麗できれい。

お腹に当たるよう、帯に新聞紙を折って入れるのが、ポイント。

お腹が冷えないように…。


「夏菜…着付け終わったよ」

「お母さん、ありがとう!」


着付けを終えたお母さんは、私の肩に手を押さえて、鏡がある所に連れていってくれた。


鏡越しに映る自分は、まるで別人のようだ。
どうしたら、こんなに人は直ぐに変われるのだろう・・・



私の浴衣姿をカメラで撮ったお母さんが、リビングに向かって小走りしては、財布を持ってきた。



「夏菜、このお金で何か好きな物を食べておいで!」

そう優しい声で言ったお母さんは、私の手に1000円札を握らせてくれた。


「お母さん、ありがとう!!お土産買って来るね。」


「お土産なんかいいのに。
夏菜、そろそろ時間でしょ?気を付けてね!」



お母さんに"行ってきます!"を言うと、私はその場を後にした。
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