やさしい眩暈







「おはようございまーす」



裏口のドアを開けると、店長のミサトさんがストックルームから顔を出した。



「おはよ、レイラ。早いね」


「昨日の帰り、急いで片付けたので、何か不備があったかもしれないなと思って」


「あ、そうなの? 真面目だねえ、まあ私としてはすごく助かるけど」


「いえ、自分の都合で急いでいただけなので………」



私はミサトさんに軽く頭を下げて、休憩室に入る。


ロッカーの中にいれてあった濃いブラウンのサロンエプロンを取り出して腰につける。



オフホワイトのシャツと黒いスキニージーンズまたはスカート、そしてブラウンのエプロン。


これがこの店のユニフォームだ。



シンプルだけどスタイリッシュで洗練されていて、私は一目で気に入った。


お客さんにも人気があるようだ。



全身がうつるスタンドミラーで身だしなみを整え、口紅も塗り直して、私は店に足を向けた。



"Cafe Canaria"と書かれた看板を入り口に立てかける。


カフェ・カナリアというのがこの喫茶店の名前だ。



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