やさしい眩暈
私が二年前からバイトをしているこのカナリアというカフェは、

都内のとある大きな大学の最寄り駅、K駅に隣接するビルに入っているカフェだ。


学生だけでなく教職員、少し離れたところにある住宅街の住人も客としてやってくる。



毎朝7時半に開店すると同時に、K駅から都心部へ出勤していくサラリーマンたちや、どこかからK駅に降り立った学生や教職員たちが次々と来店する。

彼らはそれぞれ、朝の珈琲をゆっくりと飲んだり、慌ただしくモーニングセットで軽い朝食をすませたりして、仕事や学校へと向かうのだ。



働いている私が言うのもなんだけど、なかなか雰囲気がよくて珈琲も紅茶も食事もおいしく、そのわりには価格もお手頃なので、人気があるのは頷けた。



朝の通勤通学ラッシュの時間が終わると、昼どき前後には近所の主婦たちの憩いの場になる。


定年退職したおじさんたちの集会場にもなっている。


二時間も三時間もゆっくりとおしゃべりを楽しんだ主婦たちや老人たちが帰る時間になると、

今度は大学帰りの学生たちが姿を現す。



彼らはドリンク一杯、ときにはトーストなどの軽食を注文して、友達どうしで喋ったり、議論をしたり、パソコンでレポートを書いたり、何時間でも粘っていく。



いろんな人が思い思いのことをする様子をこっそり観察するのは、なかなか面白い。


それに、こんなに長く続いた職場は初めてだった。




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