これは平和で日常的なラブコメです。
「なんで狙ったように来るんだ!
なんでこんな穴場に!!」

俺達がいるのは京都の中にある穴場の菓子屋『氷蜜堂』の前。誰も知らないはずの場所に何故副担任達が………

「なんでって、いーじゃねーか。甘いもの食いたいし、背ぇ伸ばしたいし(ボソッ)」

「すみませんね、申し遅れました。私、鷺ノ宮高等学校の理事長。………鷺ノ宮華澄です。以後お見知りおきを」

………すごい、皐月さんより遥かに上を行く美しさだ………って、違う違う。この方が理事長とは…もしかして、鷺ノ宮って…

「あの、ちょっとよろしいですか?」

「はい、桂木麻里さん。」

先に質問された。

「な、なんで私の名を…じゃなくて、鷺ノ宮ということは、前理事長の…」

「はい、娘です。こう見えて、まだ20なんです。」

「………てっきり18くらいかと…」

あ、藍……、お世辞はやめろ………!!


「あら嬉しいですね。ところで、これは一体………」

自己紹介を済ませて満足したのか、本題に入ってしまった。どうなるんだろう、これ

「おいおい、華澄。この前言っただろ?
不良退治の依頼が来てるって。で、それをクラス、いや、学校で目立っているこいつらにやらせるって。」

「あら、そうでしたか………」

まてまて………色々ツッコミたいが、学校に依頼が来るって…なんだよ。俺は、俺達は鷺ノ宮高等学校の裏側を知ってしまった。きっとこれは開けてはならないパンドラの箱………あー、空が青いな。


「おーい、生意気ユッキー。聞いてんのか?」

「は、はい!」

「依頼を達成したので皆さんにお礼がしたいのですが………」

いつの間にか話がお礼の話になっていた。

班員は何がいいかと話をしている。
それにしても、お礼か………

「ユッキー君、でしたか…現金でもいいのですよ?」

ガチャ、とケースを開け中身を見せられる。諭吉がいっぱいだった…………だが

「現金は受け取れませんね………」

「あら。欲のない、いい子ですね?」

欲が無い訳じゃないけど………現金は………

「ならば、私の貞操を…」

と、言いながらスカートを捲り、胸元を見せる理事長。

「て、貞操…ですか…」

「ふふ…」

り、理事長の………て、はっ………!危なかった、このまま欲に任せたら殺られる!!

「貞操は大切にしましょう。理事長。あと、これは彼女達が動いてくれたから依頼が達成されました。褒美は彼女達にあげてください。」

危ない………本当に危ない。理事長も油断ならないな。

「(ユウキ、よく耐えたな。華澄の奴、お前を試してたんだよ。)」

「(うーちゃん先生………)」

「(ばっ、その名で呼ぶな。恥ずかしいだろ?ま、まぁ華澄が認めたお前なら特別に許してやるよ。)」

なんか知らないけど、うーちゃん先生をうーちゃん先生と呼ぶことを許してもらえた。正直に言うとどうでもいい。

まて、試していた………とは?

先生の言葉に引っ掛かる、何のために試したのだろうか。分からない………

「じゃあ………でお願いしますね?」

「はい、分かりました。彼だから大丈夫でしょう。」

「お、終わったか。」

どうやら褒美の話が終わったようだ。

用事を済ませた理事長達が移動する際に謎の会話が聞こえてきた。

「ええ、彼女達を応援しながら………ふふ」

「お前も…なかなか黒く、えげつないな。私には分からない、奪略の良さが。心の遊びが。だが、親友としてお前についていくよ。」

「ふふ、はい。」


黒い?えげつない?奪略?何の話だろうか。しかも、応援って何の…

「ほーらっ、夕紀。氷蜜堂行くんでしょ?早く行こうよ!」

「あ、藍、待てよ…」

「さぁさぁ、ユッキー。」

マリまで…

「仕方ないな、ははは。」

「そうですね、ふふっ。」


15分後、氷蜜堂のデザートを堪能し、次に行く場所を決めることになった。

「ここは?」

「うーん、締めじゃない?」

「じゃあ、ここ?」

「そこは、娯楽しかないだろう。」

「むー……」

マリが意見を述べて、賛成か反対かを俺達が言う。少しマリが可哀想になってきた。

「マリにばかり言わせてないで、俺達もなんか案を出した方がいいんじゃないか?せっかくの宿泊研修なんだ。仲を深めるためによ。」

「ユッキー………」

「じゃあ、こことかは?」

「いや、18禁じゃねーか!」

「にっひっひ、すぐ反応する夕紀ワロス」

「やかましい!!」

ここで笑いが起きる。しばらく笑いながら話しているとすぐに決まった。

『金閣寺風幽霊屋敷』

歴史の勉強をしながら恐怖体験ができる。楽しみながら勉強ができるためレポートにいいだろうとここになった。

「そんじゃまぁ、行くとしますか。」

「「「「おー!!」」」」


………………


「よくも…殺してくれたなぁぁ!!」

歴史の人物の怨みがお題なのだろう。歴史の説明文を読んでいると横から飛び出してくる仕組みらしい。それを見て……

「ひぃぃぎゃぁぁぁぁ!」←藍

「ぴぎゃぁぁぁぁ!無理無理ィィ」←マリ

「べ、別に怖くはないな」←ヒエラ

「夕紀さん、楽しいですね。」←皐月さん

あぁ、確かに楽しみながら勉強ができる。だが……

「なんでお前ら俺にしがみつくんだ。」

現在、右腕に藍、左腕にマリ、右手を皐月さん、腰にヒエラ。

客観的に見たら羨ましい光景だが、実際に体験すると動きづらい。この一言に尽きる

ガタンッ!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

「「#₩*&%£Ф!?」」←藍、マリ

「ひっ、まだ続くのか……」←ヒエラ

「そろそろ可愛く見えますね……」←皐月

皐月は慣れているのか、動じないが反対に、藍とマリは声にならない叫びをあげ始めた。ヒエラは少しずつ怯えている。

実は自分も、内心ヒヤヒヤしている。来るとわかっているのに見てしまう。この好奇心をどうにかしたいな。

「っと、お前ら出口が見えたぞ?」

「ひぐっ、夕紀ぃ……」←藍

「ユユッ、ユッキー…こわいよ……」←マリ

「はぁ……はぁ、はぁ、はぁ」←ヒエラ

「あら、おしまいですね。残念…」←皐月

とりあえず、外に出たらアホコンビ二人にアイスでも買ってやろう。



…………

色々な場所を回っていると、既に太陽が沈む時間になっていた。

ホテルに集合し、これからの予定を確認する。17時30分に入室、荷物の整理。19時から食事開始か、風呂は……書いてない。

「ー……なので守るように!それでは解散なのです。はぁ、疲れた……」

うーちゃん先生……本音が出てますよ……

「さてさて、にっひっひ」

「つつつ、ついにきたね」

「来たのはいい、早く部屋に行きたいんだが……」

「ふふふ……」

なにやら班員がそわそわしている。何事かと思っていると理事長がやってきた。

「では、A班5名はこれより、私達の泊まる高級ホテル、エリザベスの一室へ向かいます。準備はいいですね?」

「よくないです!褒美なのは分かりますが、一室に5人!?」

「はい、ベッドも沢山あるので。」

……理事長、貴女やっぱりすごいよ……
予想外のことしかしないから。

どこからか車の音が聞こえてきた、見た感じリムジンだ。でも一体誰が……

ガチャ

「さぁ、行きましょう。」

あんたかよ!!

心でツッコミを入れつつ渋々入る。一体女子は何を考えているのだろう。横目で様子を確認する。

まずは、藍から……

ニヤついているな……なにがあったし

マリは…顔が赤いが嬉しそうだな。一体マリに何が……

ヒエラは……瞑想か?瞑想中なのか?

皐月さんは……何故か下着を取り出し始めた。貴女はどこに迷走しているんだ。

以上、女子の様子でした。

全く読めない、幼馴染みの藍の考えなら普通に読めるはずなのに何故か読めない……なんか怖くなってきたぞ……

と、思っていたが……


「「「「かんぱーい!」」」」

なかなか悪くないな、高級ホテル……
2時間のバイキングとは、しかも貸しきりで。前言撤回、最高に気分がいい。

「さて、なにから食べようか……」

ん?みんなは……

「皐月!見て、見て、伊勢エビがある!」

「ふふ、美味しそうですね。取っていきましょう。」

「ほらほら、ヒエラちゃん!ケーキ!ケーキが沢山あるよ!」

「……ここは天国か……」

みんな仲良くしているようだ。怪しい行動を起こす気配もないし、安心した。さて、おっ、フィレステーキか………美味しそうだ

それからしばらく料理を堪能した。


………………

「はぁ、美味しかったぁ。」

「お風呂行ってみる?混浴とかあるよ?」

「混浴………か。面白そうだな。」

「ふふ、いいですねぇ………」

あれ?なんか………話についていけない………
現在、女子と部屋に居るのだが既に空気扱いになっていた。
別に悲しくないし………ぐす。

「さて、ほらほら夕紀、お風呂行こっ!」

「ほら、ユッキー立って!混浴しよ?」

「うむ、一度裸の付き合いをしたかったんだ。」

「体を流そうかしら………ふふふ……」

「あ、あはは……」

空気じゃなくなったのはいいけど…なんか……うん、いけないような。

こうして、宿泊研修1日目前半戦が終了した。
夜はまだまだ長い……んだよな?

逃げなければ……

それから5分後
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