これは平和で日常的なラブコメです。
 
ついに始まる宿泊研修、その前に一つ言いたい。

「あの、すみません。」

「はい、なんなのですよー?」


担任が出発前の会議に出ているので、発表されていない副担任が来る。という話だったが、目の前にいるのは小学6年くらいの少女だった。

「貴女は小学生ですか?先生ですか?」

質問をすると自称副担任がキレた。

「ああん?うーちゃんは列記とした教師。それを『小学生ですか?』とは………バカにしすぎ。だいたい………」

キャ、キャラが変わった………

それから、口の悪い説教が10分続いたところで担任の水島先生が戻ってきた。

「遅くなってすみませーん。会議がありましてー………」

「いいよ、先生。さ、楽しんでいこう」

「そうだよ、そうだよ!」

この中にヤジを飛ばすような奴はいない。研修に行く前から既にクラスが団結していた。こんなクラスあまりないと思うんだが。

「それでは、みなさーん。バスに乗ってくださーい。」

「「はぁぁぁい!!(なのですよー!)」」

さて、座席は決められていないからどこに座るかな………ん?

ふと中央でじゃんけんをしている四人が目に入る。

「いい?勝った人が夕紀くんの隣だから」

「いいぞ、手加減はしないがな。」

「もうなんでもいいんじゃないの?」

「夕紀さんの隣…ですか、ふふ…」

「お前ら何やってるんだよ…邪魔になるぞ?」

気になって声をかけてしまった。幸い、まだ話をしている生徒が多数いるので邪魔にはならないが、早く座らせた方がいいだろう。が、

「「「「じゃーんけーん」」」」

「人の話を聞けぇぇぇぇ!!」

聞く耳を持ってくれなかった。

んで、俺の隣にいるのは何故か、またまたマリ。

「えへへ………夕紀くん…」

「こわっ、怖いよマリ、誰か俺と変われ!」

なんでマリはこんなに嬉しそうなんだ、それにしても………

「………(チラッ)」

「zzz………」

「え?最近マリの様子がおかしいって?」

「うむ、そうなんだ………」

皐月さん……寝るの早いな………まだ乗って3分だぞ?残りの班員は会話中か………

「夕紀くん、夕紀くん」

後ろを見ていると、楽しそうなな顔をしたマリに話しかけられた。

「な、なんだ?」

「仲良くなりたいし、なんかあだ名付けていい?」

「別にいいけど………」

王子以外がいいな、できれば…

「ヤ#チン☆夕紀くん。」

「卑猥なマスコットみたいだな!!」

「気に入らない?なら…」

頼む、まともな奴を頼む………

「ヤリ#ン王子☆ユーくん」

「いい加減ヤ#チンと☆から離れてくれ」

「仕方ないなぁ………」

次来たらこいつのあだ名をビッチ☆桂木にしてやる。

「ユッキーなんてどうかな?」

「む………悪くないな。(言えない……)」

ユッキーか、悪くないあだ名だな。ユッキー、ユッキー。
馴染む、実に馴染むぞ!!

ふと背後から殺気を感じた。

「………!」

ギギギ…と、油の切れたロボットのように首を後ろに回す。すると………

「夕紀さん……むにゃ」

皐月さんは寝ていた。恐らく藍はヒエラと話をしているのだろう。でも、なんで後ろから殺気が…って、あ……マリは今クラスの中で人気がある。ということは、この視線、この殺気は………

まさかと思い、チラッと男子組に視線を送る。すると、

「おー、どうしたんだよ暮内ィィ……」

「楽しそうじゃん夕紀ィィ……」

「暮内氏!暮内氏!」

「ユッキー、俺等とヤらないか?」

白々しいやつらのオンパレードだった。

ヤバい……色々な意味でヤバい。(特に最後の奴、俺の…命ではなく貞操がヤバい。)

「な、なぁマリ。俺、ヒエラと変わることにするよ。」

「えっ?なんで………?」

「いや、色々とな…(言えない、命が危ないって言えない…)」

すると一瞬沈んだ表情を見せたが、
「うん、分かった。」と、いつもの明るい表情に戻った。

俺が後ろに行くと藍と皐月さんの姿が目に入った。ヒエラはマリの横に座った。

そして、藍は俺に気がつくなり

「あ、夕紀が来た。逃げよう…」

「なんでだよ!!」

「あはは、冗談冗談。ほら、開けるから座ったら?」

ぽんぽん、と座席を叩く。位置的に藍と皐月さんに挟まれることになる。

「ふあ…あ、夕紀さんどうぞ。」

「あぁ、ありがとう。」

挟まれる形で座ると………前から

「ちっ………」

「…………死くじった。殺るしかない」

「この一撃に賭ける……」

「ウホッ♂掘れ掘れ」 「アァーッ♂」

「くっ、両手に花か……」

さっきより殺気が強くなった。さらに会話の内容も危険域に…(貞操的に危ない奴は耐えきれずに掘り始めたのか……?)

「俺の命…持つかな…」

「「………?」」

心配でならなかった。

バスが出発して20分、あと少しで着くだろうが結構混んでいる。

「長いな………」

「そうですね、夕紀さん…」

気のせいかな、背筋がゾクッとしたんだが

パタッと何かが肩に当たる。藍の頭だ。
眠ってしまったのだろう、幼馴染みだから別に興奮したりはしない。そのまま肩を貸してやるか………

「っと、急に発進するとは………」

「っとと、すみません夕紀さん。」

「あ、いや、いいんだよヒトミさん……」

なんだろう、いい匂いがする。これは花かな……京都……浴衣…皐月さん。

「……………(ごくり)」

思わず生唾を飲んでしまう。絶対に似合うだろう。
ヒエラは侍の衣装とか似合いそうだな。
マリは………洋服でいいか………
藍は…なんだろうな。

考えていると皐月さんが微笑みながら俺を見ていた。

「どうしたの?」

「いえ、夕紀さんが考えている顔が可愛らしいのでつい…」

「へあっ!?」

か、かかか…何を言ってるんだ皐月さんは……それに何だこの妖艶なオーラ…出会った時とは違う…これが本当の…

「はい、私です。」

「なんで俺の周りはエスパーばかりなんだろう…」

あれか、渡る世間は(エスパー)伊藤ばかりか…

「きっと、夕紀さんは顔に出やすいんですよ。気持ちが…だからほら、私が近づくとこんなに……」

「…………っ!」

だ、ダメだ……誘惑に負けてしまう…あぁ…

「とか、言ったら緊張しますか?」

「ごめん、ドキドキを返して(泣)」

本当に俺のドキドキを返して欲しい。

再び殺気が………

「ヴァーブルスコヴァー………」

「さて、もうすぐ(血)祭りの真っ赤な花火があがるな。」

「藁人形に、藁人形に、藁人形に…ごっすんごっすんごすん釘~!」

「WRYYYYYYY!!」

「ユッキーが女を取るって言うなら…
そんなユッキーはいらない♂」

ダメだ………会話の内容が酷すぎる。
『男子は大変な会話をしていきました』が発売されちゃうよ………一人はキチガイになってるし、ヤンデレ(♂)まで………

「あらあら………(クスクス)」

「皐月さん……貴女ドSですか……」

「夕紀さんが望むならMにも……」

はっ………!また殺気が………しかも連携してるだと………あれ、音楽が流れ始めた……誰だよ、カラオケの音源流してるのは

「いらないわ、そんな夕紀!呪いをかけてたら倒れちゃう!」

「俺等とは、違うから!」

「クラスのマドンナたちを盗まないで」

「あな、なっなっ、(尻の)穴を掘れー!ズ、ズ、ズンズン」

危ない………著作権的にも………

「クスクス……夕紀さん可愛い…ゾクゾクします。」

「俺もゾクゾクしますよ…」

命の危険が迫ってますからね…ハハハ

しばらくすると、京都の町が見えてきた。ここからは待ちに待った班別自主研修だ。各班に別れて名所を見る。当然レポートも書かなければならない。
とにかく、これから安全な研修が………

「暮内ィ、ちょっと付き合えよ…」

「トイレ行こうぜー?」

「お前、俺のピーっで小便しろよ…」

始まるわけないよね…
まだ殺気が残ってたわ……
神頼みしかないな………あははのはー
誰か助けて………楽しい研修を終わらせないで、頼むから。も、もうメールしかないな

『だらかたすてけ』

ミスったぁぁぁぁ!誰かぁぁぁぁ!

「あらあら、みなさん………」

「さ、皐月様!」

「皐月嬢………」

呼び方が変わりすぎだろ、一週間前のお前らはどこに行ったんだ。

「彼を………」

あ、もしかして皐月さんは俺を助けるために………

「彼を弄る権利は私にしかありません。さぁ、去りなさい。」

んな訳ないよな、それに権利は貴女にもありませんよ………

「さぁ、夕紀さん。楽しい研修にしましょう。」

「あ、夕紀、先に行くなら言ってくれれば…」

「それからここで…」

「ふむふむ…」

まぁ、皐月さん以外にもいるから楽しい研修になるかな。でも弄られ続けたら俺の精神は…

と思っていたが、

「はい、ユッキー。半分こ!」

「おう、サンキュ」

マリに八つ橋を分けてもらったり、

「あ、これ可愛いよね?」

藍の猫耳姿を見れたり

「ゆ、夕紀…に、似合うか?」

ヒエラが侍の衣装を着たり

皐月さんが浴衣で

「おどきやすー!!」

浴衣…で…

「ひぃぃぃぃ…」

浴衣………で…不良を制裁したり…

おかしいな、楽しいはずなのに皐月さんのイメージが崩れていく……

あれ?違う。制裁してるのはヒエラだ、なんで浴衣を……

あ、違うわ侍の衣装だ。声を皐月さんが、ヒエラが制裁担当、藍が撮影、マリがナンパされた少女………

「何やってんのおまえら!!」

今気がついた、こいつら取り返しの付かないことしてるよ。こんなとこ、理事長や副担任に見られたら………

「おー、やってるやってる。」

「あらぁ?何事かしら………」
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