幸せの定義──君と僕の宝物──
ユウは水割りを飲みながら、どこか頼りなげなトモの様子を窺った。

トモは頬杖をついたまま顔をしかめている。

「それにさ…オレ自身の気持ちがよくわからねぇんだよ。もう随分昔の話じゃん。それなのに今でも彼女の事が好きなのか…ただ彼女との想い出に浸ってたいだけなのか…。」

ユウの目には、トモが昔の恋の想い出と今の現実の境目を、あてもなくさまよっているように見えた。

「そればっかりは…会ってみないとわからないんじゃないか?確かに見た目なんかはある程度変わってるかも知れないけどさ…どんなに時間が経ってても、変わらない気持ちもあるよ。」

「そんなもんなのかな…。ユウが言うと説得力あるような気がするわ。」

トモはユウの顔を見て笑った。

「実際会ってみて、やっぱりいい想い出だって思う事もあるんだろうけどな。オレは…やっぱりレナじゃなきゃダメなんだって、再認識したから。再会してから、昔よりももっと好きになった。」

「言うねぇ…。そんなに好きな相手と結婚までして…もうすぐ子供も生まれるんだもんな…。幸せモンだな、ユウは。」

どこか寂しげな笑みを浮かべて、トモはため息をついた。

「どっちにしても、今のその気持ちがなんなのか確かめないと…トモが前に進めないんじゃないのか?」

「……かもな。やっぱ、いい加減ここらでハッキリさせるべきなのかなぁ…。オレも、リュウも。」

「リュウも?」

「アイツ…自分の事、なんにも話さないだろ?でもな、あれからリュウも誰にも本気になってないって事は知ってる。元々女性不信なとこはあるんだけどさ。」

「そうなんだ…。」

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