有害なる独身貴族
「九、十……、はい、ちゃんとあります」
お金を確認し、領収書を記入して茜さんに渡す。
「ありがとう」
艶のある唇が笑みの形をかたどると、空気さえも華やぐようで、目を奪われた。
綺麗な人だ、と思う。
ケバいお化粧に負けない、しっかりした目鼻立ち。
色白の手足はスッと長くて、男の人だけじゃなく、女の人も一瞬見てしまうくらいスタイルがいい。
こんなに綺麗なのに、性格もいいとかって羨ましい。
内側からも光り輝く、眩しい人。
こんな人になりたかった。
でも、こんな人でもシングルマザーなんだ。
不幸が似合わない、太陽みたいな人なのに。
「……茜さんは、子供がお好きなんですか?」
唐突に言葉が飛び出した。
なんだか失礼なことを聞いてしまった気分で、私は慌てて口を抑える。
でも、茜さんは気にした風でもなく領収書を鞄にしまいながら答えた。
「別に好きじゃなかったわ。今もそれほどでもない。子供好きに見える?」
「浅黄くんのこと、とても大事にしているようだったので」
「ああ。浅黄が特別なだけよ。自分の子だし、あの子がいるから頑張れるとこもあるしね」
「でも子供って厄介でしょう? 手間かかるし、うるさいし」
「意外な事言うのね。つぐみちゃんは子ども好きかと思ってた」
私を見つめた茜さんは、驚いたように目を見開く。
私はどんな顔をしていたのだろう。茜さんに眉間をつつかれて、思わず怯んでしまう。