有害なる独身貴族


「これ、馬場さんが作ってくれました」

「おう。昼のメニューか?」

「下ごしらえは数家さんがしてました」

「光流が? ……そうか」

「びっくりしました。数家さんが料理してるとこ見たことなかったから」

「あいつは調理師免許持ってんだよ。でもあんま好きじゃねえみたいだから、引き抜くときに、接客だけやらせてやるって言ったんだけど。……嘘になっちまったな」


苦笑しながら、ビニール袋の中身を探る。


「鶏鍋か。温めて飯食うか。卵粥も出来たとこ」

「私やります。病み上がりなんだから寝ててくださいよ」

「いつまでも病人扱いすんなよ。これは? ……ああ、着替えか、悪いな」


もう一方の手にある衣料品の袋とかばんを奪われ、腕を引っ張られ座らされる。

あら、なんだか私がもてなされている。
待ってよ、私、看病する気満々で帰ってきたのに。


「まあ、いいから食え」

「良くないです」

「いいから。……話するんだろ。慣れたことしてねぇと落ち着かないんだ」


そう言われたら二の句が継げなくなった。
出されるご飯を一緒に食べて、自慢気に見せられる卵のキメの細かさに、「はいはい、そうですね」と頷く。


「お茶入れるのは私の仕事ですからね」


競うように、職場での仕事をなぞりだす私。

でも、お茶を飲み終えた時点で、お互い逃げ場が無くなって沈黙に包まれる。
意を決して切り出したのは私の方だ。
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