有害なる独身貴族
14.あなたと生きる365日
 橙次さんといると、色々なものが増えていく。

住みだしてから一週間、まず最初に橙次さんがしたことは一緒に指輪を買いに行くことだった。
橙次さんはダイヤモンドのついたようなものを想定していたみたいだけど、私は蔦をモチーフにしたシンプルなプラチナのリングを選んだ。
これなら、邪魔にならないからお店でもずっとつけていられる。

その後も夜の開店時間ギリギリまで連れ回され、服や下着までも買い揃えられる。


 深夜、仕事を終えてからその大荷物を持ち帰り、部屋に広げて散財しすぎたと私のほうが溜息が出る。 


「やっぱり買わなくても良かったかも。部屋から持って来ればありますし」

「戻る暇ないだろう」


確かに、今日までの間に私が自分の部屋に戻ったのは一度だけだ。
その時は一人だったから、数日分の着替えとか、充電器やおばあちゃんの写真など最低限のものしか持ってこれていない。


「でも勿体ないです」

「つぐみが着れば勿体なくないだろ」


無駄遣いが勿体ないって言っているのに、話は全然通じない。片倉さんは、私を甘やかすのばかり得意だ。


「明日、行ってきますよ。定休日だし」


明日は、おじいちゃんを招待する予定だった火曜日。
でも、その予定も無くなってしまったので、何度か往復して荷運びをしようかと思っていた。


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