有害なる独身貴族

おかしいな。
心配してもらって嬉しいじゃない、従業員としては。
無駄に協力もしてくれてたしね。

なんだかんだと片倉さんは面倒見のいい人なのかもしれない。

そうだよね。当たり前だ。
でなきゃ私と二人だけで出かけようなんて思わないよね。


「茶でも飲んで帰るか」


振り向いた彼の顔を見れなかった。
私はうつむいたまま、首を横にふる。


「荷物もいっぱいですし、この辺でお開きにしましょう。片倉さん荷物置きに店まで行くんでしょ」

「行くけど、お前んち回るくらい大した手間でもない」

「暗くもないし大丈夫です。私の家まで行くと遠回りですよ」

「でも」

「大丈夫ですって。ちょっと過保護ですよ」


無理に笑顔を作って顔をあげた。片倉さんの表情は読めない。


「そっか。じゃあな。今日はサンキュ」


お祝いの袋の方だけを私から奪い取り、彼は先に歩き始めた。

ここで、といいつつも駅までは一緒の道で。
でも一度も顔を合わせないまま歩いていた。


「じゃあな」

「はい。今日はお疲れ様でした」


それぞれ行き先までの切符を買って、別のホームへと向かう。

先に、片倉さんが電車に乗ったのを見送ってから、私は息を吐き出した。
途端に、何故か視界がじわりと歪んでくる。

なんでだ。泣きたくなるとかおかしいじゃん。


唇を噛み締め、電車に揺られて家まで向かう。

ひとりきりのアパート。
電話も、手紙も、殆ど来ない私の部屋。

私は貰った紙袋から中身を開けた。

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