六十年後のラブレター
まだ幼かった達也の可愛らしい声が空に響く。
「ゆうやー…けこやけーの、あかとーんー・・ぼー…」
優子は戸惑いながらも達也の声に合わせて歌った。
そんな優子を見て、達也は微笑みながら大きな声で叫ぶように歌った。
「「ゆうやーけこやけーの、あかとーんーぼー!」」
二人の愛らしい歌声は、雨音に消されながらも美しいハーモニーを奏でていた。
優子はいつしか恐怖を忘れ、なり響く雷雨にさえ心地よさを感じていた。
「優ちゃん!」
両親のもとにたどり着いたのは、ただっ広い黒海に幾千もの光がさしてからだった。
「ありがとう、たっちゃん。」