乾闥婆城
『何か、ずっと先のお屋敷にいるみたいだったがね。多分遊郭だろ。初めは旦那らしき人と来てたしね』

 外れの八百屋によく来るらしく、そこの主が教えてくれた。

『旦那と来てたのは初めだけだね。それから毎日一人で来る。初めは店を教える目的だったんだろうさ。そのときに、旦那が’おしの’と呼んでたから名を知ったんだ。あの子はほれ、喋らんだろう』

 いくら可愛くても、あれではね、と言い、主はとっとと店に戻ってしまった。
 そういうことがあって、女将はおしのを気に掛けるようになったのだ。

 おしのは見たところ、十にも満たない。
 そんな小さいうちから遊郭に売られたのか。
 そうであれば、あの無表情もわかる気もするが。

 だがあの子のお人形っぷりは異常だ。
 あれでは大きくなっても客の相手など出来ないのではないか。

 無表情なのはともかく、喋らないのは致命的だ。
 あれでは客との駆け引きなど出来ない。

 もしかして喋れないのだろうか。
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