美しいだけの恋じゃない
「なっ」

「ベテランだと自負していらっしゃるのなら、それに見合う立ち居振舞いを心がけて下さい。働くという事に、もっとプライドをお持ちになって下さい」


それができないというのなら、オフィスレディを名乗らないで欲しい。


まさか言い返されるとは思っていなかったらしく、師岡さんは目を見開き、口をパクパクさせながら私を凝視していた。


「…私からは以上です」


彼女にさっさと背を向けながら言葉を繋ぐ。


「申し訳ないですが、私は自分のやるべき事をやらせていただきますので。その為に早く来たのですから」


言いながら、流し台の対面に設置されているカウンターへと近付き、そこに並んでいたポットを2個、手に取る。


「あなたとのお話はこれで終わりにさせていただきます。そんな無駄な事をしている暇なんか、私にはありませんので」

「お、覚えておきなさいよ!」


裏返った声でそう捨て台詞を吐くと、師岡さんは荒々しい足音を立てながら去って行った。


……やってしまった。


それを背中で聞きながら、心の中で深くため息をつく。


だけど。


ほんの少しの後悔、後ろめたさはありつつも、それを大幅に上回る、この上ない達成感が込み上げて来た。


「須藤さんお疲れ!」


すると突然、背後からそう呼び掛けられ、思わずビクッとしながら振り向く。


「いやー、良く言った!」

「ホントホント。頑張ったね!」
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