美しいだけの恋じゃない
視線の先には、興奮気味に声を発しながら入室して来る田中さんと佐藤さんの姿が。


「いやね、佐藤さんと一緒にロッカールーム目指して歩いてたら、給湯室の方から何やらエキサイティングな声が聞こえて来るじゃない。そんで、ついつい野次馬根性が出ちゃって」

「こっそり見学に来たんですよね。騒いでいるのは師岡さんだっていうのはすぐに分かったし。ああ、またあの人、何やらトラブルを巻き起こしてんだな、必要ならば被害に遭っている人に、助け船を出させてもらっちゃおうかな、なんて考えながら中を覗いたら…」

「対峙してたのは須藤さんで、しかも華麗なる反撃が始まった所だったんだよね」

「いやー、出番なかったですよね、私ら」

「す、すみません…」


あの瞬間はそんな事、全く気にしていなかったのだけれど、怒りの感情を露にしている所を第三者に目撃されていたという事実に、今さらながらに羞恥心が沸き起こる。


「とてもお見苦しい姿を晒してしまったようで…」

「いやいや、そんな事ないよ!すっごくスカッとした!」

「そうそう。あの人にはあれくらい言ってやらないと分からないんだから」


お二人で間髪入れずにそうフォローして下さったあと、少し口調を落ち着けて話を続けた。


「ところで、先程のバトルの発端は一体なんだったの?」

「そうですよね。それ、すごく気になる」

「えっとですね…」
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