美しいだけの恋じゃない
つくづくこの男って…。


「ここぞという時の武器にする為に守っていたのかもね。でもまぁそれが事実だとして、それならそれで大満足だわー。あの子の『初めて』はあなたが奪ったって事だし」


改めて門倉保への憎しみの深さを再認識している間にも話は進んで行く。


「しかも酔った勢いでのロストバージンだなんてねぇ。カマトトぶってるけど、やっぱり見かけ通りの性に奔放で、だらしのない女だったんだなって、世間からは評価されるでしょうし~?」


ふふ、と上機嫌に笑いを漏らしながら師岡さんは続けた。


「特に井上君みたいな真面目で実直な好青年からしたら、そんな女軽蔑の対象以外の何物でもないだろうなー」

「……それが狙いだったんですか」


門倉保は唸るように言葉を発した。


「井上主任を好きなのは須藤じゃなくて、あなた自身なんでしょう?そして何故か彼女に尋常ではない敵対意識を持っている。二人が上司と部下以上の関係になるのを阻止するのと同時に、須藤を何とか貶めようと、俺を利用したんですね」

「は?何を言ってるのか全体的に意味が分からないんですけど。特に最後」

「……さっき自分で言ったじゃないですか。そういった勘は異常に働くって。俺の気持ちも手に取るように分かっていた筈だ。ああいう言い方をすれば、俺が焦って何か行動を起こすに違いないと…」
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