美しいだけの恋じゃない
この界隈のメイン通りであると推察される眼前の道路は、昼間に比べればだいぶ閑散としているのだろうけど、それでも車は定期的に通り過ぎて行くし、カップルや友人、同僚と思われる、まだまだ夜通し活動するつもりなのであろう人々の姿がチラホラと確認できた。


金曜日から土曜日に移り変わったばかりの時間帯であるという事も影響しているのかもしれない。


普通の勤め人にとっては連休初日となる、土曜日の深夜0時台はまだまだ宵の口に入るのかもしれない。


無理矢理あの出来事を頭から追い出すべく、そんな風にあれこれどうでも良い事を考えている間にタクシーが到着した。


中に乗り込み行き先を告げた後、改めてシートに深く腰掛け、何とはなしに車窓に目を向ける。


都会の深夜の街並みを鑑賞しようと思ったのに、否応なしに、そこに反射する自分自身の顔が視界を占領した。


無駄に大きい瞳。


顔の左右をきっちりと仕分けするべく、眉間の下からしっかりと隆起した鼻筋。

しかし横幅があまりなく鼻頭も小さいので、鋭利なフォルムになっていて、見る人に冷たい印象を与えてしまうようだ。


その下には、上下共に、アンバランスなほど厚くボリュームのある唇。

素の状態でも毒々しいまでに血色が良く、むしろそれを隠す為に控えめな色合いの口紅を選んで塗っている。
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