美しいだけの恋じゃない
初めての経験だけれど、女性として20数年生きていれば多方面からそれに関する情報は集まり、これくらいの知識は自然と身に付く。


下手したら後遺症が残るようなダメージを負ってしまう危険性だってあるのだ。


どっちみち、この疑惑が確定になった時、時期を待たずにお別れする事にはなるのだけれど…。


しかしせめてその瞬間までは、細心の注意を払い、守りきらなければ。


お腹を撫でつつそう思う。


……だって、今の私に、新しい命を受け入れる余裕なんてないから…。


その決断をせざるを得ない。


どうしてこんな事になってしまったのだろうか。


初めての経験ならば尚更、期待に胸を膨らませながら結果を待ちたかった。


感動にうち震えつつその事実を受け止め、その後の数ヶ月間、幸せに穏やかに過ごしたかった。


だけど私は今その対極の位置にいる。


まるで重罪の判決を待つ被告のような気分だ。


怖くて心細くて押し潰されそうだった。


気を抜くと今にも倒れてしまいそう。


だけどそうならないように、私は踏ん張り続けなければいけないんだ。


無理矢理にでも日常に溶け込まなくてはいけないんだ。


いつの間にかたどり着いていた営業部の部屋の前で、思い思いにお昼休みを過ごしている人々を見つめながら、私は自分自身にそう言い聞かせた。
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