美しいだけの恋じゃない
「須藤さんは残念だけど、このお菓子食べられないねー」

「……あ、は、はい」


一瞬間を空けてしまってから慌てて返答した。


「う…」


しかしすぐに口を閉ざし、思わず呻きながら両手で覆ってしまう。


「え?どうしたの?須藤さん」


実はお菓子の匂いを嗅いでしまった瞬間から、胸の辺りにムカつきを覚えていた。


必死にこらえ、何とか沈静化してくれるのを待っていたのだけれど、時間の経過と共にその不快感はどんどんとせり上がって来ている。


特に言葉を発した後、その波は強くなった。


「やだ、顔が真っ青だよ」

「ホント。もしかして、お菓子が原因?」


佐藤さんと田中さんに指摘される前から自分でもそれは充分自覚していた。


ムカつきが強くなるのと同時に手足や顔面から血の気が引いていく感覚もあったから。


どう考えてもこうなった要因はお菓子の香りを吸い込んでしまった事だろうけど、でも、正直かなり混乱していた。


アルコールを受け付けない体質とはいえ、匂いだけでこんな状態になった事なんて今まではなかったから。


そこである事に思い至り、ギクリとする。


……やっぱり、普通の体じゃないから?


さらに血の気が引き、全身が冷えて行くのが分かった。


「え?どうかしたの?」


するとお菓子を配り終えた菅原さんが通りすがりに私の異変に気が付き、そう問い掛けて来た。
< 143 / 219 >

この作品をシェア

pagetop