美しいだけの恋じゃない
「あ、だったら私が行くよ。急ぎの仕事もないし」


佐藤さんがサッと右手を上げながら宣言した。


「お願いします。では、そういう訳ですので部長、ちょっと席を外しますね」


佐藤さんに頷いてみせてから、門倉保は窓際に向かって声を張り上げた。


「会議の結果は後でご報告しますので」


「ああ。よろしくな、門倉君」


ずっと成り行きを見守っていたのであろう部長が、自分のデスクから返答する。


話がまとまった所で門倉保はその場から足早に歩き出した。


「ごめんね?須藤さんのお菓子は他の人に渡すね」


背後からの、菅原さんの呼び掛けに応えるべく、首を縦に振ったその時。


「菅原さんが悪い訳じゃないわよねぇ」


師岡さんの声が高らかに響き渡った。


「だって、あなたはちゃんと『お酒入り』って宣言しながら配ってたんだからさー。その後どうするかは本人の自己責任でしょう?」


途端に室内に緊張が走るのが分かった。


「ホント、学習能力がないというか、つくづくお騒がせな子よねー」

「そういう言い方はないだろう」


しかしさすが年の功で、真っ先に自分を取り戻した部長がすかさず師岡さんをたしなめる。


「菅原さんのせいではないのはもちろんだが、須藤さんの責任でもない。体調のコントロールは本人にもどうにもならない場合があるんだから。いわば不可抗力だ」

「……はーい」
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