美しいだけの恋じゃない
何か柔らかい物の上に、私はそっと横たえられた。
それを認識した所で、ふと、デジャヴを感じる。
前にもあった。こんなこと。
そしてすぐにその事に思い当たった。
そうだ。
運命の、あの夜じゃないの。
『落ち着いた?』
すると突然脳内に、その時の記憶が甦った。
私は門倉保の部屋のベッドにグッタリと身を投げ出していて、その傍らに彼が胡座をかいて座り、目線を合わせて語りかけている。
だけど不思議な事に。
私がもう一人存在していて、天井付近にふわふわと浮かび上がり、二人の頭上から俯瞰でその様子を見守っていた。
脳内スクリーンに再現されているのはそこからの映像だった。
『すみませんでした、門倉さん…。ご迷惑をおかけして…』
『いや、迷惑なんて事ないよ。居酒屋でバイトしてたから、酔っ払いの扱いは慣れてるし』
門倉保は笑みを浮かべながら陽気に言葉を発した。
『よっぱらい…。そうですよね、私、大迷惑な酔っぱらいですよね…』
『あ。もちろん、須藤に対しては義務感からとかじゃなくて、どうしてもほっとけなくてついつい体が動いちまったんだけど』
二人の会話は続く。
『井上主任が『須藤さん大丈夫か?』って言いながら近付こうとしてたからさ、思わず割り込んじまった。いくらなんでもバレバレだったかな』