美しいだけの恋じゃない
『え…?』

『『好きな女の子を他人に触れさせてなるものか』っていう、必死感がだだ漏れだったかなと…』


そこで門倉保はハッとした。


『あーっと!ゴメン。こんなタイミングで言うこっちゃないよな』


見るからに焦りまくっている。


『そんなん言われても、困っちまうよな』


『……困ったりなんか、しません』


一瞬間を置いてから、私は言葉を発した。


『とても、嬉しいです…』

『え?』

『私も門倉さんのこと、大好きですから』


『……マジ?』

『本当です』

『そ、そっか。まぁ、お世辞でも、すっげー嬉しいよ』

『お世辞なんかじゃないですよ』


弱々しく、たどたどしかったけれど、それでも真摯な響きで、必死に相手に胸の内を伝えようとしているのが分かる声音だった。


『ホントに、門倉さんのことが、大好きなんです…』


しばし室内には静寂が訪れた。


それから、門倉保がゆっくりと右手を伸ばし、ベッドに横たわる私の左頬を優しく撫でる。


『嬉しい…』


ポツリと発せられた呟きは、まるで泣いているかのように震えていた。


『すっごく、すっごく嬉しいよ、須藤…』


覚えているのはそこまで。


私はその後、安心しきって眠りに就いた。


そして……。


目覚めた時にはあの状況になっていたのだ。


こちら側の私もそこで意識が覚醒し、ハッと目を見開く。


今のは……何?
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