美しいだけの恋じゃない
「すでにお目覚めだったみたい」


すると彼女は自分の右後方に顔を向け、そう声を発した。


数秒の間のあと、それに促されるように、門倉保が三村さんの肩越しに顔を覗かせたので心底ドキリとする。


「気分の方はいかが?」


言いながら、三村さんはさっと足を踏み出し、枕元へと接近した。


「あら、だいぶ汗をかいてますね」

「え?あ…」


彼女に指摘され、その事実を今更ながらに思い出し、慌てて手の甲で額を拭う。


「何だかちょっと、暑くて…」

「ああ。この中、暖房の温度を高めに設定してありますからね」


ウンウンと頷いてから三村さんは改めて問い掛けて来た。


「で、どうですか?彼いわく、吐き気があるってお話だったけど。まだそれは続いてます?」

「あ、いえ…」


そういえば、いつの間にやら胸のムカつきは治まっていた。


「今のところは…。だいぶ楽になりました」

「そう。じゃあ、熱はないみたいだし、仕事に戻りますか?」

「はい」


三村さんに頷いてみせてから、私はゆっくりと上体を起こした。


「…本当に大丈夫なのか?」


するとカーテンの位置から動かずに、私達の会話に耳を傾けていた門倉保が、遠慮がちに言葉を挟んで来た。


「無理はしない方が良いよ」

「……いえ。大丈夫です」
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