美しいだけの恋じゃない
「はい」


……お医者さんといえど、さすがにパッと見ただけでは、妊娠しているかどうかなんていうのは分からないよね、きっと…。


時期的に、お腹だって全然出ていないし。


もちろん、たとえそれに気付いていたとしても、第三者の門倉保が居る前でうかつに口にはしないだろうけど。


でも、彼を退室させて私に何かを伝えようという素振りさえ見せないし、とにかく三村さんは私を現時点で妊婦であるとは判断していないのだろう。


やっぱり、まずはあれを手に入れて確認してみなければいけないな…。


「あ、そうだ。ごめん。仕事に戻る前に、あと5分だけここに居てもらっても良い?」


掛け布団をめくり、ベッドから抜け出そうとしていた私を慌てて制しつつ三村さんは言葉を発した。


「え?」

「ちょっとおトイレに行って、ついでに自販機で飲み物を買って来たいの。普段だったら鍵をかけてドアに札を下げておくんだけど、どうせなら二人にお留守番をお願いしようかなって思って」

「あ、はい…」

「もし誰か来たら、すぐに戻るって言っておいてくれる?じゃ、ちょっと行って来ちゃうから」


言いながら三村さんはすでに歩き出していた。


「分かりました。いってらっしゃい…」


その言葉を言っている途中で彼女の姿は視界から消えていて、そしてあまり間を置かずにドアの開閉音が響いて来た。
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