美しいだけの恋じゃない
「ちょうど一区切りついた所だから…。あの後、部長とのミーティングを経て、あちこち電話したりメールしたり領収書整理したりしているうちに良い頃合いになったんで、休憩を取る事にしたんだ。で、須藤はどうしてるかな、と思って、ちょっと様子を見に…」

「タバコ」

「へ?」

「休憩の時にはいつも、タバコを吸いに行っていますよね?今日は行かなくて良いんですか?時間、なくなっちゃいますよ?」

「タバコなんかより須藤の方が大切だから」


それまで歯切れの悪かった彼の口調はそこだけ明瞭になった。


「……ごめんな。眠れなかったっていうのは、昨日のあれが原因なんだろ?」


思わずドキリとしている間に、彼は神妙なトーンで言葉を繋ぐ。


「俺のせいで、あんな人に侮辱される結果になってしまって、本当に、申し訳ない事をしたと思っている」


「門倉……さん」


そこで私は勇気を振り絞って声を発した。


私にとっての最重要事項を確認する為に。


「ぜひともお聞きしておきたい事があるのですが…」


言うなら今しかない。


「あの夜…」


そのワードを耳にした途端、門倉保に緊張が走ったのが分かった。


「ちゃんと、後々の事まで考えて、必要な処置を、しましたか…?」

「え…?」


すぐには意味を掴めなかったようで、数秒間、困惑気味に視線を泳がせたあと、彼はハッとした表情になった。
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