美しいだけの恋じゃない
最初は建物の外にそういった場を設けようとしたみたいなのだけれど、道路や隣のビルの敷地内に煙を漂わせてしまう事になるので、中にその設備を作ったらしい。


私は入った事がないけど、強力な空気清浄、脱臭装置が設置されているようだ。


吸わない人から眉をしかめられる事もなく、思う存分その味(匂い?)を堪能できる、愛煙家にとってはオアシスとも言うべきスペース。


チャンスがあればぜひとも足を運びたくなるだろう。


ただ…。


今のはどう考えても、私から離れる口実だろうな。


私の症状如何によっては早退になるかもしれなかったから、きっと色々手助けするつもりで彼は医務室まで様子を見に来たのだろう。


でも、もうその必要はなくなったし、ならば極力、自分を避けまくっている私には近付かない方が良いだろうと判断し、このタイミングで喫煙室へと向かったのだろうと思う。


究極の密室であるエレベーターで二人きりになる前に。


もう、今さらそんな事、どうでも良いのに。


心の中で呟きながら、私は到着した箱に乗り込んだ。


3階で降り、営業部に向かって廊下を進んでいると、進行方向に菅原さんと田中さんと佐藤さんの姿が見えた。


「あ、須藤さん!」


菅原さんが真っ先に気付き、右手を上げつつそう叫ぶ。


「もう大丈夫なの?」

「あ、はい」
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