美しいだけの恋じゃない
そしてお互い、何食わぬ顔で仕事に戻った。


医務室に行く前に手を着けていた業務の続きをこなしているうちに17時を過ぎたので、ひとまず中断し、課内の皆さんの湯呑みやマグカップを回収し始める。


給湯室へと向かい、それらが乗ったトレイを流し台に置いた所で、ふと、部屋の突き当たりに位置するガラス窓へと視線が向く。


だいぶ日が延びたな…。


外界に広がる景色を眺めつつそう思う。


ついこの間まで、これくらいの時間になると外はもう真っ暗だったのに、今日はまだ太陽が完全には沈み切っていないらしく、西の空からの茜色の光彩により、地上に存在する物の形が控えめにぼんやりと浮かび上がって見えていた。


だけど不思議な事に。


はっきりくっきり潔く、黒く暗い夜と比べ、むしろ心がざわざわとざわめくような、不安感、焦燥感が沸き立つ光景だった。


確か『トワイライトゾーン』っていうんだっけ、こういうの。


昼から夜へと移行する狭間。


幽霊や妖怪や魔物など、明るい日差しの下を闊歩する事のできない異界の者達が、嬉々として活動を開始する時間帯。


それらの者のうちの誰かと、うっかりどこかで遭遇してしまうかもしれないという緊張感が、心を落ち着かなくさせるようだ。


日本語でも同じ意味合いの言葉があって、何だかすごくおどろおどろしい字面だったんだけど…。


ちょっと今は、思い出せないな。
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