美しいだけの恋じゃない
留守電や伝言モードに切り替わってしまった場合、そこにメッセージを残すのも、これまたすこぶる焦りまくりそうなので、やはり後からきちんと内容をチェックできるメールの方が都合が良いと思ったのだ。


そして人の目のある所では集中できそうになかったので、心を落ち着けて文書作成ができるよう、アパートに辿り着くまでケータイの操作はしなかったのである。


いよいよその時を迎えたという訳だ。


題名にまず『須藤です』と入れた後、私のケータイ番号も知らせる旨の文章を本文に打ち始めたその時。


…………え。


突然下腹部に、ある予兆を感じた。


とても懐かしいその感覚。


そしてすぐに、しっかりとした変化が現れ、その熱がじわじわと内壁を伝って滑り落ちて行くのが実感できた。


私は思わず紙片とケータイをテーブル上に投げ出し立ち上がると、一目散にトイレへと向かった。


「………あ」


思った通りだった。


トイレットペーパーにしっかりとその『しるし』が付着した事を確認し、思わず両手で顔を覆う。


「よかった…」


心の底から、絞り出すように、その言葉を吐き出した。


本当に良かった。


ただただ遅れていただけだったんだ。


『女性の体はデリケートだから』


そこでふいに、昨日の田中さんのセリフが脳内で再生される。


そうだよね。


この一月ちょっとの間に、様々な出来事が起きた。
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