美しいだけの恋じゃない
『いちいち呼び止めないでくれる?こっちは忙しいんだからっ。黙って入れておけば良いじゃない。その為の箱でしょう!?』


思わず佐藤さんと二人、固まってしまっている間に女性は目の前を通り過ぎ、そのまま廊下を進んで行った。


何をかくそう、その女性が金子さんだったのだ。


『ごめん。別に庶務課の人に断りは入れなくても良いんだ。私が言うのが遅かったね』


先に我に返った佐藤さんがすまなそうに囁いた。


『い、いえ、私が先走ってしまったから…』

『でも、あの言い方はないわ~』


眉根を寄せながら佐藤さんは続けた。


『あの人、金子さんていう人なんだけど、師岡さんと同期なんだよ。二課の山本さんといい、何であの世代はキツい人ばっかりなんだか』


あれがきっかけで目を付けられたのか、はたまたその前からすでに師岡さんと山本さんから何か話を聞かされていたのか(だからこそしょっぱなから攻撃的だったのか)は分からないけれど、とにかくその後も何かと冷たい態度を取られ続けた。


とりあえず同じ過ちは繰り返さないように、それ以降は用が済んだら速やかに撤退する事にしていた。


「あ、須藤さん」


自分のデスクへと戻った所で、佐藤さんが机上のメモを指差しつつ解説する。


「高幡技建の山田さんていう女性から電話があって、来週納期の製品について、確認したい事があるから折り返し連絡下さいだって」
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