美しいだけの恋じゃない
けれど、やはりそういった交流はお客様によって違いがあって、電話でもほとんどお話した事がなく、声をお聞きしただけではその方がどなたさんであるのかとっさには判断できない、というくらい関係性が希薄な方もいらっしゃった。


高幡技建さんの場合は担当の門倉保を必ず自社に呼び寄せて商談を行っているし、やはり内勤専門なのであろう山田さんとは過去に数回、取り次ぎ程度の電話応対でやり取りをしただけなのだけれど、話し方に特徴がある方なのですぐに分かった。


「先ほどはお電話いただきましたのに、席を外しておりまして申し訳ないです」

『いえ…』

「さっそく本題なのですが、来週納期予定の製品について、確認したい点がおありだという事で」

『えっと、そのことなんですけど…』


すると何故か山田さんは、もじもじ…という感じで言葉を発した。


『門倉さんは、まだ帰らないんですかぁ?』

「……え?」

『ケータイにかけたんですけど繋がらなくて…。それで会社の方にかけてみたんですよぉ。でも、不在だって言われたので、他に話の分かる人って事で、須藤さんから折り返し連絡をいただく事になっちゃったんですけど』

「……はい」


彼女が何を言いたいのかはだいたい予想がついたけれど、順序よく話を進める事にした。


「門倉が担当している業務の補佐をしておりますので、私にも大抵の事ならお答えできると思います」
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