美しいだけの恋じゃない
「だけどそういう考えでいられると、周りがとっても迷惑するワケ。現にこんな風に、担当者の私がわざわざ確認しに来なくちゃいけなくなったでしょ?時間のロスもいいとこだわ、まったく」

「ちょっと待って下さい」


すると今度は田中さんがそう声を上げながら、ツカツカとカウンターまで歩を進めて来た。


少し遅れて佐藤さんもこちらに向かって歩き出す。


「紙袋はちゃんと庶務課の箱の中に入っていたんですよね?伝票だけがないなんて、おかしくないでしょうか?」

「だから、この子が入れ忘れたんでしょ?」

「そうなの?須藤さん。その自覚はある?」


お三方に向けていた視線を私に移し、田中さんは真剣な表情で問い掛けて来た。


「い、いえ。私、間違いなく入れました」


棚から袋を取り出し、伝票を中に挟み込むあの一連の流れは、しっかりと記憶に刻まれている。


「そうよね。須藤さん、16時過ぎにしばらく席を外していたし。あの時に在庫チェックをしていたんでしょ?」

「はい」


私の返答を受け、田中さんは再び順に3人に視線を配りながら話を進めた。


「伝票を書いたのにその存在をすっかり忘れて袋だけ運ぶっていうのはちょっと考えられないし、間違いなく入れたという彼女の主張は正しいと思います」

「だったら、どこか途中で落としたんじゃないのー?だらしのない持ち方でもしていてさ」
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