美しいだけの恋じゃない
「えー。でもこれ、そんな簡単に落ちますかね?」


田中さんの肩越しにひょっこり顔を覗かせ、佐藤さんが発言した。


「袋は畳まれてる状態な訳だし。そこに入れた伝票はピタッと密着する形になるから、ちょっとやそっとじゃズリ落ちないと思うんですけど」


「……さっきから一体何なの?あんた達」


金子さんの表情がそれまでよりもさらに険しくなり、声のトーンも低くなった。


「まさか私がウソをついてるっていうんじゃないでしょうね?」

「伝票ってどういう感じのやつなんでしょうか?」


この上なく不穏な空気が漂ったけれど、それを打破するように、いつの間にやら背後に佇んでいた門倉保が会話に割り込んで来た。


「え?どういうって…」


目をぱちくりとさせながらも一番近くにいる佐藤さんが解説する。


「B6くらいの大きさで薄い黄緑色で、二枚複写になってるやつなんだけど…」

「薄いきみどりですね。分かりました」


門倉保は頷きながらそう言葉を発したあと、足早に部屋を出て行った。


「え?あれ?」


佐藤さんはもちろん、その場に居る全員、思わず呆然と彼を見送ってしまった。


「……いきなりどうしたのかしら?門倉君」

「ホント。一体どこに向かったんでしょうね」


田中さんと佐藤さんがそうやり取りをしている間に、新たな人物が入室して来た。
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