美しいだけの恋じゃない
「ん?なんだなんだ?」

「どうしたんですか?皆さん集まって」


新規の大口契約をまとめる為、一緒に取引先に出向いていた部長と井上主任が帰社したのである。


お二人とも、心底不思議そうな表情だった。


「あ、お疲れ様です。実は…」


田中さんが代表してここまでの経緯を簡単に説明する。


「……じゃあ、現時点では、うっかりどこかでその伝票を落としたかもしれないっていう線が濃厚なんだ」

「可能性があるとしたら、ですけどね」


田中さんがそこを強調しながら解説する。


「須藤さんはきちんと伝票を袋に入れたようですし、それが届いていないという事は、本人も気が付かないうちに、何かの弾みで、信じられない偶然が重なって、袋から抜け落ちたとしか考えられませんから」


部長に向けてそう言った後、田中さんは金子さんの顔に視線を向けて、そのままじっと見つめた。


彼女は一瞬気圧されたような表情になったけれど、すぐに鋭い眼差しで田中さんを見つめ返す。


「須藤さん、庶務課へは階段で行ったのかな?」

「あ、はい…」


部長の問いかけに頷きながら答えた。


五十嵐パイプの社員は皆、体調でも悪くない限り、一階分上がるくらいならいちいちエレベーターは使用しない。


「じゃあ、落ちてるとしたらそのルート上か…。一応探しに行ってみるか?」
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