美しいだけの恋じゃない
「……いや、ですから、別に須藤さんの責任と決まった訳では…」
「あんたは黙っててくれる?」


フォローしようとして下さった佐藤さんをキッと睨み付け、ピシャリと制した後、金子さんはすぐにキツい眼差しのまま私に視線を戻した。


伝票は絶対に、間違いなく、袋に入れた。


あの記憶が思い込みや思い違いなんかである筈はない。


ただ…。


その後の移動中に、伝票を落としたりなんかしていないと百パーセント言い切れる自信は、残念ながら私にはない。


もしかしたら本当に自分では気付かぬうちに何かの弾みで伝票が滑り落ちてしまったのかもしれない。


そしてそんな事は露知らず、そのままそこを立ち去り、後から通りかかった誰かがそれを拾って、後で届けようとしてくれたのだけれどそのまま忘れてしまったか、もしくは深く考えずに破棄してしまったという可能性もある。


何しろ今、私の行動に関する事で、皆さんの貴重な時間を奪ってしまっているのは紛れもない事実だ。


ここは金子さんの言う通り、きちんと頭を下げて…。


「すみません。これ見てもらえますか?」


するとその時。


どこかに消えていた門倉保が、大きな荷物を手に営業一課に戻って来た。


満杯に紙片が詰められた、半透明のビニール袋を。


「え?どうしたのそれ?」


田中さんがいち早く反応する。
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