美しいだけの恋じゃない
「そんな、私……」

「ベテラン云々については心当たりがありますが、かなり主旨、論点がズレてしまっていますし、後の二つの証言は、いつ、どこで、耳にしたんでしょうか?」


一部真実の混じった、だけど大部分は事実無根の二人の訴えに、どこからどう反論すれば良いのやら、考えがまとまらずに焦りまくっている私を見かねてか、田中さんが代わりに話を進めて下さった。


「須藤さんは同期の子とはほとんど交流していないみたいで出勤時と退社時はいつも一人だし、お昼休みや休息時間は私や佐藤さんと行動を共にする事が多いですけど、少なくとも、私達は今まで彼女がそんな風に一方的に、他人の悪口や陰口を言っているのなんか見聞きしたことはないですけど」

「え…?」

「そうですよねぇ。そんな話を聞く機会、ホント、一体いつあったんでしょうか?まさか須藤さんが一人で壁に向かってブツブツと呟いていたとでも?」

「だ、だって、礼子が…」


田中さんの解説に驚いたように顔を上げ、佐藤さんの同意に更に混乱しつつ、金子さんは師岡さんに視線を向けた。


「……私を巻き込まないでくれるかな?」


しかし彼女は。


「今回の件は浩美が勝手にやったことでしょ?私を盾にするのはやめてよねっ」


冷たく突き放すように、金子さんにそう言い放った。


「なっ…」

「ち、ちょっと、礼子?」
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