美しいだけの恋じゃない
しかし門倉保は全く怯むことなく、こちらもいつになく厳しい表情で、彼女を真っ直ぐに見つめ返す。


「みなさーん。聞いて下さい!」


すると師岡さんは突然パッと振り返り、室内に顔を巡らせつつ声を張り上げた。


「こんな正義の味方気取りの、カッコつけた話し方をしてるけど、この門倉保はホントは最低最悪の男なんですよー!」


そこで私はハッとした。


「だって新年会のあの夜、コイツは須藤美智瑠とっ…」「ええ、そうですよ」


彼女が言わんとしている事を察知し、思わず体を硬直させて息を詰めた私とは対照的に、むしろそれを予想していたかのように、門倉保は被せ気味に言葉を繰り出した。


「あの夜、須藤に前々からの思いを告白し、それを受け止めてもらえたので、その日から真剣なお付き合いを始めました」


「……え!?」


僅かなタイムラグのあと、真っ先に佐藤さんが反応する。


「う、嘘っ。ホントに!?」

「はい」

「えぇー。いつの間にそんな事にー」

「全然気付かなかった…」

「確かにあの時、門倉君、須藤さんのこと甲斐甲斐しく介抱してたもんね」

「そういう事だったのか」


それを皮切りに、あちらこちらから声が上がる。


「でも、それがどうかしましたか?」


門倉保は目を見開いて自分を凝視する師岡さんに向けて、穏やかに語りかけた。
< 203 / 219 >

この作品をシェア

pagetop