美しいだけの恋じゃない
「まだ業務が途中の者もいるだろう。もちろん、終了している者は速やかに退社するように。もう定時を過ぎてしまっているんだからな」


その呼びかけで、それぞれが行動を開始した所で、部長は私に視線を移す。


「不本意だろうけど、須藤さんは至急新たな伝票を作成して来て、それを金子さんに渡して。そして金子さんは責任を持って予定通りの処理を行うように」

「はい」

「……はい」


私に少し遅れて金子さんも返答した。


「そして二人共、やるべき業務を終えたら、今日の所はひとまず帰りなさい。ただ、後日関係者を集めて、聞き取り調査が行われる事になると思う」


部長は主に金子さんを見つめながら厳しい表情で続ける。


「このような陰湿な嫌がらせがあった事を見過ごす訳にはいかない。ここだけの話で留めておく訳にもいかない。上へはもちろんコンプライアンス委員にもきちんと報告させてもらう」

「……はい」

「申し訳ないけど須藤さんにも召集がかかるだろう。今日の件はもちろん、師岡さんが発言していたらしい事柄について、確認が必要だから。まぁ、おそらく君は一方的な被害者であるとは思うが」

「でしたら、その話し合いの際、私も立ち合ってよろしいでしょうか?」


まだカウンター前に留まっていた田中さんが言葉を挟んだ。
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