美しいだけの恋じゃない
お二人を見送った後、私は破棄書類の入ったケースを手に、今度こそ、部屋の隅にあるOA機器が密集しているエリアへと歩を進め、シュレッダーかけを開始した。


「お先に失礼しまーす」


その間にも一人、また一人と部屋を出て行き、その都度「お疲れ様でした」と声を返す。


師岡さんはいつの間にやら室内から消えていた。


きっと私が給湯室に行っている間にさっさと帰ったのだと思う。


門倉保は強奪して来たゴミ袋を責任を持って集積場へと捨てに行き、帰りに庶務課に寄ってお騒がせしたお詫びをして来ると、井上主任に宣言していたので、今のところ姿を消していた。


ウチのゴミはどうなっているかな…。


書類をすべて処理した所で、満杯のランプは点いていなかったけれど、念の為前面のカバーを開いて中身をチェックしてみた。


まだ袋の半分ほどしかゴミは溜まっていなかったので、交換はせずに、そのまカバーを閉じて電源を落とす。


私も早く帰ろう…。


心の中で呟きながら席へと戻り、デスク周りを片付け、トートバッグを手に出入口へと歩を進める。


「お先に失礼いたします」


その途中、来客時や少人数でのちょっとしたミーティングの際に使用する長机の前で、今日の商談について話し合っていたのであろう部長と井上主任、そして他の数人の方々に向けて言葉を発した。


「おお、お疲れさん」

「気を付けて帰ってね」
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