美しいだけの恋じゃない
「……そっか」


とても安堵したような表情でそう呟き、門倉保は続けた。


「ただ……。残念だけど、その話し合いですべてが明らかになったとして、金子さんには大したペナルティは課せられないかもしれない。社内だけで完結するトラブルで、経営に多大なる損失を与えたという訳ではないし」

「……だからこそ彼女も今回、行動を起こしたんでしょうね」


会社の痛手にはならずに、私だけに恥をかかせられる、効果的な嫌がらせを思い付いてしまったから。


それを実行せずにはいられなかったのだろう。


「裏で情報操作していた師岡さんに関しては、虚偽の噂を流し、他人の名誉を傷付けていた訳だから、金子さんよりは重い処分になるかもしれないけど、それでもやっぱり、いきなりクビにするというのは難しいかもしれない。彼女との完全なる決別は果たせないかもしれないから、そこは覚悟しておいて」

「……はい」


金子さん山本さんの証言があっても『そんな事私は言っていない』ととぼけられたら、それを証明するのは至難の技だものね。


とにかく、彼女にどのような処分が下るのかは、上層部の判断にお任せするしかない。


「それと、一番言いたかったのはこの事なんだけど…」


何となくお互い黙り込んでしまい、数秒の沈黙の後、門倉保は話を再開した。
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