美しいだけの恋じゃない
陽気に笑い合いながら歩き出した先輩達を呼び止めようとして、寸での所で思い留まる。
ここで門倉保の申し出を拒む訳にはいかない。
表向き彼は「飲み会の席で酔いつぶれた後輩を介抱し、タクシーで送り届けてくれた心優しい先輩」なのだから。
恩人である彼を、私が冷たくあしらえる立場ではない。
というよりも、うかつな対応をして真実が浮き彫りになってしまったりしたら、私自身が窮地に立たされる事になる。
だから私は不本意ながらも彼の要求を受け入れるしかないのだ。
そう覚悟を決め、私を促すようにチラリと視線をこちらに配ってから廊下を奥へと進んで行く彼の後に続いた。
エレベーターホールを横切り階段室まで歩を進め、二階分上がってから、さらにその上の、屋上に通じるドアのある踊り場まで移動する。
通常ドアの鍵は施錠されており、社員といえども勝手には出入りできない決まりだった。
つまりめったにここまで足を踏み入れる者はいないという事で、だからこそ、人目を避けて話をするつもりでいるのであろう彼は、私をこの場所に誘導して来たのだろう。
田中さん達と話していた時は平常心を保てていたのに、門倉保と二人きりで対峙した途端、動悸が激しくなって来た。
階段を上がったのだけが要因ではない。
ここで門倉保の申し出を拒む訳にはいかない。
表向き彼は「飲み会の席で酔いつぶれた後輩を介抱し、タクシーで送り届けてくれた心優しい先輩」なのだから。
恩人である彼を、私が冷たくあしらえる立場ではない。
というよりも、うかつな対応をして真実が浮き彫りになってしまったりしたら、私自身が窮地に立たされる事になる。
だから私は不本意ながらも彼の要求を受け入れるしかないのだ。
そう覚悟を決め、私を促すようにチラリと視線をこちらに配ってから廊下を奥へと進んで行く彼の後に続いた。
エレベーターホールを横切り階段室まで歩を進め、二階分上がってから、さらにその上の、屋上に通じるドアのある踊り場まで移動する。
通常ドアの鍵は施錠されており、社員といえども勝手には出入りできない決まりだった。
つまりめったにここまで足を踏み入れる者はいないという事で、だからこそ、人目を避けて話をするつもりでいるのであろう彼は、私をこの場所に誘導して来たのだろう。
田中さん達と話していた時は平常心を保てていたのに、門倉保と二人きりで対峙した途端、動悸が激しくなって来た。
階段を上がったのだけが要因ではない。