美しいだけの恋じゃない
「なんなんですか…」


乱れる呼吸を整えて、声を絞り出す。


「先輩達の前であんな、思わせ振りな誘い方をして。妙な誤解を与えるような言動は止めて下さい」

「ごめん…」


相変わらず、普段の彼とはかけ離れた、暗いトーンで言葉を繋ぐ。


「今のことだけじゃなくて、あの夜のことも」


予想はしていたけれど、話が核心に触れた瞬間、心拍数が最大級にはねあがった。


「ただ、一つだけ言い訳をさせてくれ。俺のアパートに連れて帰ったのは、あの状態の須藤を一人にしておくのが心配だったからで、決して、最初からそれ目的だった訳ではないんだ」


激しく脈打つ心臓をどうにか静めたくて、何の効果もない事は分かりきっていたけれど、思わず服の上から両手で押さえた。


「もしもの場合は救急外来に連れて行く事も考えていた。だけど水を大量に飲ませて、吐かせて、っていう処置をした所、次第に容態は落ち着いて来た」


彼もまた、体内で何かしらの異変が起きているらしく、とても苦しそうな表情、声音で釈明を続けた。


「この分なら大丈夫だろうと、ホッと一息吐いた所で、それまでは看護に夢中で意識していなかった、君の無防備な姿が突然クローズアップされて…」

「男としての本能が目覚めてしまい、その欲望に従って、襲ったという事ですか」
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