美しいだけの恋じゃない
中学時代、ついうっかり両親に『先生と生徒から生意気な子だと勘違いされて説教された』という愚痴をこぼしてしまった事がある。


『やっぱりその髪の事でトラブルになったか…。一度先生方に会って、きちんと話し合いをした方が良いかもな』

『そうよね』

『あ、で、でも、きちんと説明して、すぐに分かってくれたから大丈夫だよ』


眉間に皺を寄せて発言したお父さん、心配そうな表情でそれに同意したお母さんに向けて、私は慌ててそう言い繕った。


ただただ我が子の為を思っての働きかけでも、学校内の問題に親が首を突っ込むと、その後更に面倒な事態に発展する恐れがあるという知識は、誰に教えられた訳でもないけれど一般論として自然に身に付いていた。


だから一応は納得した振りをしながらも、厳しい目で監視を続けている教師がいる事や、派手めな子を中心に、ほとんどの女子に敵対心を持たれ、冷たく接して来られる事などは必死に隠し通したのだった。


ましてや悪意が進化し、『男を手玉に取る淫乱女』という意味合いの、事実無根の噂まで流されて、一部の男子にちょっかいをかけられた事など、到底言える筈がなかった。


親には『初対面で偏見を持たれる事が多いけれど、すぐに誤解は解け、その後はその人達とそれなりに上手く付き合っている』という風に誤認させた。


親の目のある所では青春を謳歌している普通の女子中高生であるかのように振る舞った。
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