美しいだけの恋じゃない
次いで壁に取り付けられているシャワー付き水栓に視線を合わせる。
操作するのに必要な文字や数字が書いてあるけれど、気がそぞろで、中々理解ができない。
しかし、しつこく観察しているうちに、自宅アパートや、過去に宿泊した事のある施設に設置されていたシャワーと使用方法は大差ないという事を認識できた。
そこにたどり着いてから数分後、ようやくお湯を出す事に成功する。
温度を確かめる為と、心臓とは離れている箇所から湯に慣らしたかったので、まずは指先を降り注ぐ滴の中に差し入れた。
温かいものに触れた事により、幾分平常心を取り戻したけれど、本格的にシャワーを浴びるべく体の位置を変えながら、ふと、何気なく視線を下に向けた私はまたもや恐慌状態に陥った。
少量ではあったけれど、内腿に、その上から滴り落ちて来たのであろう血液が付着している。
今さらながらに先ほどの彼のセリフに合点がいった。
『は、初めてだったのか?須藤…』
湯が当たり、輪郭が崩れ、だいぶ毒々しい色が薄まったその液体が、膝、ふくらはぎ、足首の内側を瞬く間に通過して浴槽の底に流れ、排水溝へと吸い込まれて行く様を見届けた所で、私は強いめまいを感じ、その場に崩れるようにして座り込んだ。
と同時に、出血するほどのダメージを内部に受けていたのだという事を認識し、下腹部の鈍痛が再発する。
操作するのに必要な文字や数字が書いてあるけれど、気がそぞろで、中々理解ができない。
しかし、しつこく観察しているうちに、自宅アパートや、過去に宿泊した事のある施設に設置されていたシャワーと使用方法は大差ないという事を認識できた。
そこにたどり着いてから数分後、ようやくお湯を出す事に成功する。
温度を確かめる為と、心臓とは離れている箇所から湯に慣らしたかったので、まずは指先を降り注ぐ滴の中に差し入れた。
温かいものに触れた事により、幾分平常心を取り戻したけれど、本格的にシャワーを浴びるべく体の位置を変えながら、ふと、何気なく視線を下に向けた私はまたもや恐慌状態に陥った。
少量ではあったけれど、内腿に、その上から滴り落ちて来たのであろう血液が付着している。
今さらながらに先ほどの彼のセリフに合点がいった。
『は、初めてだったのか?須藤…』
湯が当たり、輪郭が崩れ、だいぶ毒々しい色が薄まったその液体が、膝、ふくらはぎ、足首の内側を瞬く間に通過して浴槽の底に流れ、排水溝へと吸い込まれて行く様を見届けた所で、私は強いめまいを感じ、その場に崩れるようにして座り込んだ。
と同時に、出血するほどのダメージを内部に受けていたのだという事を認識し、下腹部の鈍痛が再発する。